法人破産~会社の経営継続が厳しくなった方へ~

会社の経営状況が悪化し、どうしても継続が難しければ「破産」しなければならないケースもあります。
「破産」というとマイナスイメージが強いかもしれませんが、実はメリットもたくさんある手続きです。

法人破産についての重要ポイントを解説します。

法人破産とは

法人破産とは、株式会社や合同会社、社団法人などの「法人」の破産手続きです。
破産すると「負債」も「資産」も含めて「法人そのもの」が消滅します。
負債が大きく膨らんで会社経営が苦しくなったとき、会社を破産させてしまえば全額支払う必要がなくなります。

債務超過になったり資金繰りが悪化したり赤字続きでこれ以上持ちこたえるのが困難となったら、法人破産を検討しましょう。借入れがあり、個人保証をしている場合は、個人の破産も同時に検討することになるのが通常です。

破産を適用できる「法人」とは

法人破産の対象となるのは、株式会社だけではありません。例を挙げると以下のようなすべての「法人」に適用できます。

  • 株式会社
  • 特例有限会社
  • 合同会社
  • 合資会社
  • 一般社団法人
  • NPO法人
  • 財団法人

民事再生との違い

会社が倒産状態になったときには民事再生の利用を検討するケースもあります。
破産と民事再生の違いは以下の通りです。

会社が残るか消滅するか

破産すると会社は消滅するので、後には何も残りません。経営継続は不可能です。
民事再生の場合、会社は消滅せずこの世に残せますし、元経営者が再建に関与できるケースが多数となっています。資産やブランド価値、これまで積み上げてきた信用などを残せるのは民事再生のメリットといえるでしょう。損益計算書上の「営業利益」(本業の儲け)が出ているものの、資金繰りが悪かった場合などに再生手続を利用することになります。

負債を返済しなければならないか

民事再生の場合、負債額を「減額」できますが一定金額は残ります。
再生計画案の認可後、返済を継続しなければなりません。したがって、返済を継続するだけの営業利益をあげていることは申立てにとって必要な要素となります。

破産すると負債はすべて消滅するので一切返済する必要がなくなります。事業の継続・維持が困難な場合は破産を選択することになります。
借入金やリース料などの一般債権だけではなく、未払い税や未払いの保険料なども支払う必要はありません。

法人破産と個人破産の違い

法人破産と個人破産には以下のような違いがあります。

消滅するかどうか

法人が破産すると法人自身が消滅します。資産も負債も何も残りません。
一方、個人が破産しても個人が消えることはなく、その後も生きて人生をやり直すことができます。
なお、法人破産の場合は、代表者が借入について個人保証をしていることが多いため、同時に破産の申立てをすることが通常です。

免責の有無

個人の場合、負債を免除してもらうには「免責決定」を受けなければなりません。
破産は、「免責」を受けるために申立てをするといっても過言ではありません。
自然人の場合、免責不許可事由があって免責されなければ、破産後も負債が残る可能性があります。
法人が破産すると法人自身が消滅するので「免責」という概念はありません。免責不許可事由も存在せず、破産手続きが終わったらすべての負債は消滅します。

非免責債権の有無

個人破産の場合、税金や健康保険料、養育費などの一定の負債は「非免責債権」として残存します。これらの負債は破産後も支払わねばなりません。

法人破産には「免責」という概念がないため非免責債権もありません。法人名義の税金や保険料などもすべて支払い義務がなくなり、破産後は一切払う必要がありません。

ただし代表者が「個人保証(納税保証)」していた場合、法人の破産後も代表者が法人名義の税金などを払わねばならない可能性があります。

法人破産のメリット

法人を破産させるとどのようなメリットがあるのでしょうか?

取り立てを受けなくなる

会社の資金繰りが悪化して支払いが遅れると、債権者から取り立てを受けてしまいます。
金融機関だけではなく取引先やリース先、不動産管理会社などからも督促されるでしょう。

弁護士に破産手続きを依頼すると、弁護士が受任通知を送った段階で取り立てが止まります。すべての連絡は弁護士を介して行うことになるため、会社や代表者への連絡は来なくなります。
弁護士介入後もしつこく取り立てが続く場合、弁護士から相手に連絡をして取り立てをやめるように申し伝えますし、裁判所へ申し立てをした後は管財人からも連絡してもらえます。

日々取り立てを受けて精神的に疲弊しているなら、早めに破産手続きを開始しましょう。

経営から解放される

債務超過、赤字企業を経営するのは大きな困難を伴います。
経営者としては、今月従業員へ給料を払えるのか、不動産賃料や取引先への支払いをきちんとできるのかなど頭を悩ませて眠れない日もあるでしょう。
また、財務諸表を弁護士と検討して、会社の運営が可能であるかを客観的に検討することも大事です。
破産させてしまえばすべての支払が免除されるので、こういった悩みからは解放されます。
経営状況の悪化した法人から自由になり、別会社に就職したり新たに起業したりして人生をやり直せるメリットがあります。
実際、起業したものの、経営がうまくいかず会社員に戻られるというパターンの方もおられます。

すべての負債の支払いが不要となる

法人を破産させると、法人名義のすべての負債の支払いが不要となります。
どれだけ高額な負債、多種多様な負債があっても全額支払う必要がありません。

限度額もなく一切の支払いを免除されるのは大きなメリットといえるでしょう。

法人破産による代表者個人への影響

法人が破産すると経営者個人へどういった影響が及ぶのでしょうか?

基本的には影響がない

法律上、法人と個人には「別の人格」が認められるので、法人が破産しても経営者個人への影響はありません。経営者個人の所有不動産や預貯金、車などの財産が失われる心配は不要です。

個人保証している場合

ただし経営者が会社の負債を保証していれば、経営者が会社に代わって負債を払わねばなりません。
会社が破産すると、通常は残債を経営者(保証人)へ一括請求されます。経営者も払えない場合、個人としても破産しなければならず、経営者自身の資産も失われます。

日本では金融機関からの借り入れの際、経営者が個人保証するケースが多くみられます。そういったケースで会社を破産させるなら、経営者も一緒に破産する必要があります。

法人破産のデメリット

法人破産には以下のようなデメリットがあります。

会社が消滅してしまう

法人が破産すると会社自身がこの世から消滅します。
会社経営を続けることはできません。これまで積み上げてきた信用や資産もすべて失われてしまいます。

信用を失う

会社を破産させると、経営者個人の信用が失われる可能性もあります。世間の厳しい視線が気になる方もいらっしゃるでしょう。ただしそういったものは事実上の不利益に過ぎず、ときが経てば人は忘れていきます。そのために厳しい時を弁護士と一緒に乗り越えましょう。
また会社が破産しても経営者の「個人信用情報」には直ちに影響がありません。経営者が破産しない限り、ローンやクレジットなどの利用は可能です。

経営者が保証していれば個人破産しなければならない

経営者が会社の負債を保証している場合、個人としても自己破産しなければなりません。そうなれば自宅や個人名義預金などの個人資産が失われますし、個人信用情報に事故情報が登録されてローンやクレジット、融資などを一定期間受けられなくなるデメリットがあります。

手間と費用がかかる

法人破産は個人破産以上に必要書類が多く、手間と費用がかかる手続きです。
弁護士への依頼が必須となるでしょう。

法人破産の要件

法人を破産させるには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

支払不能

支払不能とは、法人の収益と負債額のバランスからして、今後支払いを継続していくのが不可能な状態です。売上や収益に比して支払額が高額すぎて支払いを継続できない場合、支払不能と認められます。具体的には不渡りを出して銀行取引を停止された場合や支払いをストップしてしまった場合などに支払不能といえるでしょう。

債務超過

法人の場合、資産より負債が大きくなっており債務超過であれば破産できます。

会社を破産させるべきタイミング

以下のような状況であれば、会社の破産を検討しましょう。

  • 資金繰りが悪化しており、経営体制を改善しても支払い継続は困難
  • 会社の経営環境が苦しく、いったん会社を畳んで0から再スタートしたい

従業員がいる状況、事務所、工場などの不動産賃貸借契約が継続している状態でも法人破産は可能です。未払いの給料については「未払賃金立替払制度」によって一定金額までは補填できます。

法人破産は弁護士へ相談を

法人破産は非常に重厚で複雑な手続きであり、経営者ご本人が単独で進めるのは困難です。
弁護士に依頼すれば、必要書類収集のサポートや債権者とのやり取り、申立手続きなどすべて弁護士が代行するのでご本人には手間がかかりません。
弁護士が受任通知を発送すると取り立ても止まりますし、従業員の解雇手続きや賃貸物件の明け渡しの進め方についてもアドバイスいたします。

当事務所では名古屋や東海エリアを中心に多種多様な会社経営者の方からご相談をお受けしてきました。
また経営が悪化しても必ず破産しなければならないとは限りません。民事再生で対応できるのか、また経営者ご本人が破産する必要があるのかなども含め、状況に応じてベストな解決方法をお伝えいたします。会社の経営が苦しくなってお悩みの経営者の方がおられましたら、お早めにご相談ください。また、個人事業主の方は、「個人再生」の方が妥当なことも少なくありません。お気軽にご相談ください。

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