自己破産後の生活はどうなる？本人や家族への影響を解説

自己破産しようと思っても、破産後の生活が心配で踏み切れない方が少なくありません。
実際には本人が思ったほどの不利益が及ばないケースが多いのですが、予想外のトラブルを防ぐためにも正しい知識をもっておきましょう。

自己破産後の生活がどうなるのか、ご本人への影響とご家族への影響に分けて解説します。

自己破産すると「できなくなること」と自己破産しても「問題なくできること」があります。

自己破産後の生活でできないこと

ローン借入

自己破産すると個人信用情報に事故情報が登録されて金融機関や貸金業者の審査に通らなくなります。いわゆる「ブラックリスト」とよばれる状態です。もっとも既に支払い遅延によって、ブラックリストに載っている場合もあります。

自己破産後5～10年程度は住宅ローン、車のローン、教育ローン、事業用ローンなどの借り入れはできません。

本人名義のクレジットカードの発行、利用

自己破産をして個人信用情報に事故情報が登録されると、クレジットカード会社の審査にも通らなくなります。
新規のカード発行や利用ができません。
ただし家族が本会員となっているクレジットカードの「家族カード」の発行や利用は可能な場合があります。

スマホ端末の分割払い

スマホ端末などの物品購入の分割払いもできなくなります。
実態は、割賦販売であるため、信販会社の審査に通らないためです。

信販系保証会社がつく不動産賃貸借契約

不動産賃貸借契約の中でも「信販系」の保証会社が入る案件では審査に通らず、契約できなくなります。
ただしそれ以外の一般的な賃貸借契約であれば自己破産後でも締結できます。

自己破産後にできること

デビットカードの利用

自己破産してもデビットカードは利用できます。デビットカードは利用と同時に預金口座から引き落とされるカードです。クレジットカードと同じように使えて便利なので、口座を持っている銀行で発行してもらうと良いでしょう。PAYPAYやLINE　PAYといった決済方法も利用することはできます。

家族カードの利用

家族が本会員となっているクレジットカードの「家族カード」であれば発行してもらえます。
カードの審査対象は「名義人（本カードの契約者）」であり「利用者（家族）」ではないからです。

新たな財産形成

自己破産すると、破産手続開始決定時の財産はほとんどすべて失われますが、その後の財産形成は自由です。これを固定時主義といいます。
給料も全額受け取れますし起業して儲けを出しても遺産相続してもかまいません。

就職

自己破産後の就職は自由にできます。免責決定が確定すれば職業制限もありません。

起業、取締役への就任

自己破産後、あらたに起業したり取締役などの役員に就任したりすることも可能です。

銀行口座開設や利用

自己破産しても銀行口座を新たに開設したり利用したりできます。ただし銀行カードローンは5～10年程度利用できません。

不動産の賃貸借契約、入居や居住

信販系の保証会社が入らない一般的な不動産の賃貸借契約は締結できます。破産者だからといって審査に落とされる心配はありません。

生命保険や医療保険への加入、契約者貸付の利用

自己破産後も生命保険、医療保険、学資保険などの各種保険に加入できますし、積立式の保険であれば契約者貸付も受けられます。

自己破産後は自由に資産を持てる

自己破産すると「破産後の財産もすべて没収される」と考える方がおられます。
しかし破産後は自由に財産形成できるので心配はいりません。たしかに、諸外国では、「破産後の財産もすべて没収される」という膨張主義という立法政策を採っている国もありますが、わが国は異なります。
破産後に起業で成功して「富裕層」となっている人もいますし、遺産相続などもできます。
破産したからといって、給与が入ってこないというわけでもなく、直ちに生活できなくなる心配はもちろんありません。

自己破産しても家族に知られるとは限らない

「自己破産すると家族に知られる」と思い込んでいる方もおられますが、誤解です。
弁護士に手続きを依頼して家族に伝えなければ知られないケースも多々あります。

自己破産しても解雇されない

「自己破産を会社に知られたら解雇されるのでは？」と心配される方もいますが誤解です。
破産したからといって解雇理由にはなりません。
仕事をきちんとこなしていれば解雇やその他の不利益取り扱いをされる理由にならないので安心しましょう。

自己破産は離婚原因にならない

「自己破産を配偶者に知られると離婚を要求されるのでは？」と心配される方もおられます。
法的には自己破産や借金トラブルがあっても生活費を使い込んで迷惑をかけたりしていなければ離婚理由にはなりません。夫婦で協力してやり直しているケースも多いので心配しすぎないでください。

一般的な就職に不利になることはない、公務員にもなれる

自己破産後は職業制限を受けず自由に就職できますし、公務員にもなれます。
職業制限は破産手続き中の一時的なものですし、制限されるのもほんの一部の職業に過ぎません。自己破産後の就職問題をさほど心配する必要はないでしょう。

自己破産をすると、一時的にいろいろな制限を受けます。どういった制限があるのかみてみましょう。

財産がなくなる

破産手続開始決定時に保有していた財産は一定程度を超える分がなくなります。
たとえば家や車、保険や預貯金などで「20万円を超える分」は換価されて債権者へ配当されます。
不動産については原則として換価対象になるので、持ち家に住んでいる方はいったん家を失うことになるでしょう。

就職の制限

破産手続開始決定から免責決定が確定するまでの間は就職制限があります。
警備員、生命保険外交員、税理士や司法書士、弁護士などの士業、騎手や調教師、公証人や質屋、貸金業者、旅行業者、卸売業者などが制限の対象です。

医師や看護師などの医療資格や公務員は制限対象ではありません。

長期旅行や引っ越しの制限

自己破産の手続き中に長期旅行や引っ越しをするときには裁判所の許可を取らねばなりません。手続きが終了したら自由に移動ができるようになります。

官報公告

自己破産をすると、2回ほど「官報公告」されます。官報公告とは、政府が発行する官報という機関誌に破産情報が掲載されることです。
官報をみる人が身近にいたら破産した事実を知られてしまいます。
ただ現実には官報を読んでいる人はほとんどいないので、官報公告によって破産を知られるのをさほどおそれる必要はありません。

自己破産後、家族へはどういった影響があるのかもみてみましょう。

家族への影響はほとんどない

自己破産をしても家族へはほとんど影響がありません。
破産は「破産者」個人が行うものであり、配偶者や親子であっても「他人」である以上手続きと関係がないものと扱われます。

家族が返済する必要はない

自己破産しても家族が代わって返済する必要はありません。（連帯保証をしていれば別ですが）
本人が面積を受ければ借金などの負債が消滅します。債権者から家族へ督促される心配も不要です。

家族の財産は没収されない

自己破産しても家族の財産に影響はありません。家族名義の預金や保険、不動産や車などはそのまま残せます。
ただし財産隠しのために家族名義に変えると没収される可能性が高くなり、免責不許可事由と判断される可能性もあるのでやってはいけません。

家族の信用情報に傷はつかない

自己破産しても家族の信用情報に事故情報は登録されません。家族はローンやクレジットカードを使えますし、利用を止められる心配も不要です。

家族に知られないケースも多い

自己破産をした事実すら家族に知られないケースも多々あります。
それくらい、自己破産による家族への影響は小さいといえます。

考えられる家族への影響

自己破産すると、以下のような間接的な影響が家族に及ぶ可能性があります。

• ブラックリストによってローンを組めない
  本人がブラックリストになって住宅ローンや車のローンなどを組めなくなるため、家族で家や車を買おうとしても買えない可能性があります。ただし家族自身に十分な資力や信用があれば問題ありません。
• 家がなくなって引っ越しを余儀なくされる
  家が破産者名義になっている場合、家はなくなるので家族全員が引っ越ししなければなりません。
• 家族で積み立てた預金や保険がなくなる
  これまで破産者名義で積み立ててきた預金や保険がある場合、破産によって失われます（ただし20万円以下であれば残せます）。
  家族名義であればなくなりません。

家族が保証人や連帯保証人になっていたら、主債務者の破産によって保証人（連帯保証人）」に全額請求されてしまいます。家族も払えない状態であれば、一緒に破産などの債務整理をしなければならないでしょう。家族以外の友人や親戚などの人が保証人（連帯保証人）になっている場合も同じです。

保証人がついている借金がある場合に破産するなら、事前に保証人や連帯保証人へ連絡を入れて対処方法を相談しておくようお勧めします。

自己破産をしても、世間で思われているほどのデメリットは及ばないケースが大多数です。家族に知られず破産している方も多いですし、クレジットカードやローンを使えない以外はほとんど制限もありません。名古屋や東海地方で借金トラブルにお困りの方がおられましたらお気軽に名古屋ヒラソル法律事務所までご相談ください。